JENの対談企画 Mimosa Talk // #4 岸本幸子さん×木山啓子| 002

ミモザトーク|2017.09.04

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(写真:左から/木山啓子、岸本幸子さん)

#2 私たちの生活が、世界に結びついている。 

<難民問題の変化>

岸本:話は変わりますが、先日、木山さんが難民の方々の状況が今、大きく変わってきているおっしゃっていましたよね。実際にどう変わってきているのですか。

木山:1点目は、難民の数が第2次世界大戦以降最大になった事。私たちの業界ではよく知られていることですが、一般の方には、馴染みが薄いかもしれませんね。

2点目は、紛争自体の形が変わったこと。以前は、国家間、民族間や独裁的な政府に対するクーデター的な内戦であったりと、領土の争いが多かった。だから境界線が比較的分かりやすく、境界線が戦闘の前線でした。例えば、JENが旧ユーゴスラビアで活動していた時は、「前線の活動が活発です」って言われて、その前線に近づかないようにすれば、戦闘に巻き込まれる治安リスクを低減することができました。戦闘員たちも、ソフトターゲットと呼ばれる丸腰の一般人や支援関係者を攻撃することはありませんでした。

でも今は、ゲリラ的な攻撃が多く、一般人が犠牲になることがあまりにも増えました。すると難民の数も増えます。そこに民族の問題が絡んでくると地域が国境をまたいだ問題となり、さらに大国が関与し世界的な問題に発展しています。
紛争を決着させるために様々な提案がなされていても、全員が納得できるような解決法を見つけるのは難しい。論理的に解決できない複雑な要素があるからこそ、紛争が長引いています。

岸本:そして、自然環境の変化や、干ばつ、飢餓、貧困の問題が広がっているというのは一番根底にありますよね。

木山:おっしゃるとおりです。旧ユーゴ紛争も、民族紛争と言われていましたが、実は、経済的な問題だと言う人が少なくなかった。生活が困窮する前は気づかなかった格差や、それによって起こる不信、不安、不満などが戦いの口実に利用されうるのです。どうにもならないところまで追いつめられた人たちが、何とかして生き延びようという状況で、「さらに追い打ちをかけに来るぞ」と脅されれば、その攻撃から家族を守ろうと立ち上がる人がいても不思議ではありません。前回のミモザトークで千田さんが戦争は被害者の顔をしてやってくる、とおっしゃったその状態です。こうして、争い、戦いというものに「扇動」されていく。

—扇動ですか?

木山:普通の人たちはどんなに追いつめられても、安易に暴力で解決しようとは思わないはずです。ただ、民衆の不安を敏感に察知してそれに応えようとする、もしくはそれを利用しようとする人がいる時、戦争に向けて人々を扇動することは難しくないと思います。

岸本:貧困の拡大や地球環境の悪化には、日本にいる私たちも含め、誰もが関与していますね。私たちの生活が世界の情勢にどういう変動を起こしているのかを想像する力をもつことが大切ですね。
そういった、私たち一人ひとりが「思いやり」「共感」などの、他者に対する想像力をつけるために、分かりやすく勉強できるようなオススメの方法、何かありますか?

木山:WEBサイトを見るなど、色々な方法があると思いますが、お勧めしたいのは映画です。社会課題を取り上げた映画はたくさんありますし、ユナイテッドピープルさんの様に、こうした課題に取り組んだ映画を紹介することを主な活動としている組織もあります。直近で私が見たのは「0円キッチン」という映画。

この映画は、“世界の食料の3分の1が捨てられている”という現状を伝え、その行動を変えてもらうための映画なんです。この映画の監督は5週間もの間、廃棄食材だけを食べて欧州を旅します。冷蔵庫でカピカピになったチーズとか、賞味期限が10年前に切れたパスタとか、そういう物を全部出してもらって調理をして…。そうすると意外と美味しく食べられる。

この映画の様に、1つの社会課題に特化した映画は、自分で考えるきっかけになると思います。

(敬称略)

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岸本幸子|きしもと さちこ

パブリックリソース財団専務理事

東京生まれ。シンクタンク勤務、留学を経て、2000年パブリックリソースセンター(現組織の前身)、2013年現財団を創設。寄付文化の刷新を目指し、個人や企業が社会貢献活動を行う際のコンサルティングや実施支援、NPOの寄付適格性評価、社会的活動のインパクト評価などに携わっている。共著に「寄付白書2015」他。

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