怪我をしたら手術を受け、薬を飲んで回復する。
医者が助け、薬で治ると思う人は多い。
でも本当は、直しているのは自分自身だ。
医師や薬は、『自らの中の回復力』が発揮される様に支えているに過ぎない。
大震災から6年目の東北に思いを寄せる時、そんなことを思い出す。
復興支援は、多分、薬のような役割を担っている。
自ら立ち上がる方々を支える。
立ち上がる気持ちをくじく様な困難があっても、再び立ち上がる気持ちを支える。その杖になる。
『自ら立ち上がる力(回復力)』を備えていたり『大きな天災の被害を小さく抑えられる(抵抗力のある)』コミュニティをレジリエンスのあるコミュニティと呼ぶことも多くなってきた。
東北に、レジリエンスの高いコミュニティがたくさんあることは、この6年間で証明された。
厳しい状況の中、悲しみを心に秘めながら、
自らの暮らしとコミュニティの再生を推し進めてきた方々の努力に、心からの敬意を表したい。
同時に、どれ程レジリエンスが高くても、医師や薬が有用なことがある。
そして、薬や道具が体質に合わなければ、薬を変えるのは当然だ。
もとより全ての人に例外なく有効な薬は存在しない。
回復に合わせて薬の量も減らす。
必要に応じてリハビリもサポートしてゆく。
薬が多ければ、本来の直す力を奪う、という副作用が出ることもある。
副作用が出ない様、本来の力をそいでしまわない様、私たちは最善を尽くす必要がある。
最善とは、『できればやる』ではなく『これ以上、上はない』という状態だ。
復興を進める方々が、再び悲しい思いをしなくて済むように、
この方々のような悲しみに直面させられる人が、他所の地域で再び出ないように、
亡くなった方々の分まで、命を大切に生きてゆけるように、
東北で日々復興にまい進する人たちでなく、
東北に住んでいない私たちこそ、暮らし方を変えてゆくことが求められている。
私たちは、復興のための良い薬であれたのか、深く問いかけると共に、
良い薬であるための努力を続けると、改めて今日、心に誓う。
2017年3月11日
特定非営利活動法人ジェン
共同代表理事 木山啓子