8年。小学生は成人式を迎えた。1年でも十分長いが、8年経てばどんな変化があっても不思議はない。実際、傷ついた建物は再建・新築され、盛り土がされ、店が再開し、新たな仕事がうまれ、新たな命も生まれた。見えやすい部分の変化は大きく感じられる。
震災発生直後から、被災状況は多様だった。8年経った今、復興状況は更に多様になっている。外形的な復興状況もさることながら心の復興状況は多様だ。地震と津波と原発事故と、それにまつわる全てのことに、命を、暮しを、思い出を奪われた事実を覆すことはできないが、その受け止め方と乗り越え方は、本当に人それぞれだ。どのやり方が望ましい、ということではない。ただひたすら、人は多様なのだ。多様な中に、共通の課題は山積している。8年経って、既に、復興という言葉を使うことすらためらわれるが、敢えて復興という言葉を使うならば、一人ひとりの状況が多様だからこそ、現地にいる一人ひとりが主人公となった復興が不可欠だ。複雑化した共通課題に取り組む一人ひとりを支えるというのは、これからもJENの東北支援の方針であり続ける。
一人ひとりが自分の人生を十全に生きようとするその営みは、大災害に遭っても、それによって方向性が変わっても、本質は変わらない。その尊厳を支えていく行為に、この頃ローカリゼーション(Localization)という名前がついている。世界の人道支援の現場で、これまで以上に意識的に、現地の人々を主体として尊重する形で支援をしていこうという決意を表した言葉だと考えている。
東北の人々が、外部の人々の支えとともに、これまで成し遂げてきたことは、世界の厳しい状況にある人々の希望だ。世界の人道現場のお手本でもある。
木山 啓子