シリア難民支援速報

The Road ×クーリエ・ジャポン|極寒の難民キャンプに訪れる“暖かい冬”の知恵|

2017.11.18
 cj_logo_blue_100px[ 本連載は、クーリエ・ジャポンとの連動掲載です。 ]
ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

20171118_01

寒い冬に温かな幸せをもたらすシリア難民の知恵

今年もザータリ難民キャンプに冬がやってくる。灼熱の砂漠のイメージがあるヨルダンだが、キャンプ周辺は冬になると気温が氷点下になることもある。だが、ここに暮らすシリア難民たちは厳しい冬がやってきても、知恵と工夫を凝らして生活を楽しみ、シリアを偲ぶことを忘れない。

Text by Abeer Al-Eid and Suhaima Al-Ammari
Photographs by Mohammed Al-Refaee

 

ザータリ難民キャンプに暮らす、シリア難民の冬支度が始まった。砂漠地帯の極寒の冬を凌ぐため、人々はどんな工夫をしているのだろうか。「THE ROAD」が取材した。

オム・ラフィエ(44)は、空気が澄んだ冬が好きだと言う。とはいっても、ザータリ難民キャンプの冬は厳しい。ラフィエは、冬の間も家族が温かく快適に過ごせるようにと、準備の真っ最中だ。

食糧を貯蔵しておくことは、特に重要だと彼女は言う。マクドゥース(小なすのオリーブオイル漬け)、ヨーグルト、モロヘイヤ、オクラ、ぶどうの葉といった保存食は、シリア人が冬を越すために欠かせない。

さらに冬が訪れる前にはマットレスを洗い、仮設住居の修理をして、隙間から水や寒気が入ってこないようにする。

オム・マフムード(39)も他の女性たちと同じように冬支度で大忙しだ。

「私も家族も全員冬が大好きなの。冬の空気も好きだし、暖房のそばに家族みんなで集まって座るのも好きよ。冬に食べたら美味しい保存食もちゃんと貯蔵したわ」

もう少ししたら、シリア人の冬には欠かせないオリーブの塩漬けも作るつもりだ。さらに彼女は、子供たちを寒さから守るようにと、窓やドアなど仮設住居のあちこちを修理して回っている。

20171118_02

ヨルダンの冬は雨季でもあるため冷たい雨が降る

 こう聞くと、冬を迎える前のシリア難民の女性たちは大忙しだと思うだろう。だが、オム・カシムは、冬支度は大変じゃないし、お金もかからずに簡単にできるものだと話す。

貯蔵食はシリアにいたころも作っていたし、それによって家族が喜んでくれることが彼女にとっては何よりの喜びなのだ。

冬の初めは夜に急速に冷え込むことがあるので、仮設住居もしっかりと修理した。子供たちがいつでも着られるよう、温かい服も洗濯済みだ。

男たちも、冬支度には余念がない。

アブ・オデイ(48)は、雨水が仮設住居周辺にたまらないように排水用の細い溝を作る工夫をしているという。作業はとても簡単なので勾配のある土地に住む家族はやったほうがいいと彼はアドバイスしてくれた。

アブ・アリ(56)は、冷気が部屋に入らないよう、窓とドアをしっかり閉めるようにしている。冷たい雨風から仮設住居を守るためには、オレンジ色のビニールシートで覆う方法がおすすめだそうだ。さらに、雨が降っても地面がぬかるまないよう、仮設住居の周りにある土や石を取り除いているという。

「仮設住居をこうやって補強しておけば、冬も幸福と温かさをもたらしてくれる」と、アブ・アリは言う。

リサイクル水で植物を育てる私の庭は、美しい

 Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervised by Cyril Cappai and Hada Sarhan

世界的に水不足が問題になっているが、難民キャンプでも水は最も重要な物資のひとつだ。日本の国際NGO・JENはキャンプ内で水と衛生に関わる支援を担い、ひとりひとりに充分な水がいきわたるように尽力しているが、難民たちはシリアで暮らしていたときのように潤沢には水を使えない。

人々は限られた水を、どのように節約しているのだろうか? そのユニークな知恵の数々を、動画で紹介する。

 

00:00-00:05 ヨルダンにあるザータリ難民キャンプは、世界でも有数の規模だ。

00:06-00:07 そして、世界でも最も水が不足している国にある。

00:08-00:11 ザータリ難民キャンプに住む難民の数は約8万人。

00:12-00:17 キャンプの生活用水は地下水でまかなわれている。

00:18-00:23 ひとり当たり1日35リットルの水が確保されており、約3500立方mの水が毎日消費されている。

00:24-00:28 しかし、深い井戸からくみ上げる水がひどく濁っていることもある。

00:29-00:33  なぜなら枯渇するかもしれないほど、井戸の水が少なくなっているからだ。

00:34-00:39 最近、キャンプの水の消費量が急激に変動している。

00:40-00:43 その理由を探るため、数人の難民に節水の工夫をしているか聞いてみた。

00:56-01:02 私たちは第10区に住んでいます。ホースを使って、節水をしています。

01:04-01:15 (給水所から)水を運ぶときにバケツを使うと、水がこぼれやすいからです。こぼれる心配のないホースを使って水を運搬するほうが、節水になります。

01:19-01:40 私は、洗濯に使用した水を庭の植物の水やりに再利用しています。私の小さな庭はとても美しいですよ。

01:42-01:58 私たちはザータリ難民キャンプに5年住んでいます。ここで多くの水が使われていると知っています。だからこそ、節水のためにプラスチックボトルを再利用したシャワーを作りました。ボトルに小さな穴をたくさんあけてホースをつなぎます。フタをあけると、節水シャワーになる仕組みです。

02:05-02:12 私たちは、髭剃りをするときには水を蛇口から流し続けるのではなくて、小さなボウルに少しの水を入れ、無駄なく使うようにしています。

02:19-02:21 自転車をきれいにするために水を使うのは意味がありません。

02:27-02:32 かわりに水で濡らした布で自転車をふいています。こうすれば水をあまり使わなくて済みます。

02:42-02:48 衛生の知識を学ぶワークショップでキャンプにある水に限りがあることと、どのように節水すれば良いかを学びました。

02:53-03:10 神のご加護により、節水できています。私たちは果物や野菜を洗った水を植物にあげています。ここでは水が不足しているので、無駄にできません。

03:11-03:34 私たちは、水を大量に消費するか、節水するか、選ぶことができます。私は、節水することを選び、食器洗いに使用した水を再利用しています。

洗剤を入れて、床をきれいにするために使っているのです。節水は私のためでもあり、周りの人々のためでもあります。

The Road ×クーリエ・ジャポンの記事はこちらからもご覧いただけます。
.

 cj_logo_blue_100pxクーリエジャポンで連載中のコンテンツを、編集部のご厚意により、JENのウエブサイトでもご紹介させていただいてます。