シリア難民支援速報

The Road ×クーリエ・ジャポン|シリア難民に聞きました!「ラマダン、どう過ごしてる?」

2017.06.29

 cj_logo_blue_100px [ 本連載は、クーリエ・ジャポンとの連動掲載です。 ]
ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

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5月26日、2017年のラマダンが始まった。イスラム教徒にとって1年で最も神聖なこの時期、ムスリムたちは信仰を深め、身を清めるために日の出から日没まで断食する。ザータリ難民キャンプでも、その慣習はしっかりと受け継がれているようだ。(ザ・ロードの詳細はこちらから

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シリア難民たちはラマダンをどう過ごす?
Text by Ahmed Mohammed Al-Salamat

ラマダンの期間中、イスラム教徒は日没後の食事に親戚や友人を招き、特別なごちそうやデザートを楽しむ。また、ラマダンは争いごとを終わらせる期間でもある。多くのシリア難民は避難生活においても、故郷での伝統や習慣を守り続けたいと願っているものだが、彼らはザータリ難民キャンプでいったいどのように過ごしているのだろうか?

アブ・ルアイ・アルハリーリ(29)は親戚を訪ね、シリアを懐かしみながら夜を共に過ごしているという。シリアにいたころは、家や通りに飾り付けをしてラマダンを祝った。だが、難民キャンプの生活ではそれは難しい。アルハリーリはそれを残念に思っている。

だが、ザータリでもちゃんと受け継がれていることもある。「アル・ムサハラティ」だ。

ラマダンの際には、夜明け前に礼拝(ファジュル)をし、日中の断食に備えて食事(スフール)をとる。このときにドラムを叩きながら祈りを捧げ、寝ている人々を起こしてくれるのが、アル・ムサハラティだ。この慣習はザータリ難民キャンプでも続いている。

「アル・ムサハラティの声で目を覚ますのは、とてもワクワクするものです」とアルハリーリは言う。

日没後の食事のテーブルには、なるべくいろいろな食べ物を並べるようにして、親戚や近所の人と分け合う。そのときは子供たちも大喜びだ。夜の礼拝「タラウィーヒ」の後には、互いに家を訪問し、楽しい時間を過ごす。昔は裕福な人が貧しい人に食べ物を分け与えたものだが、いまではあまりそういった光景は目にしなくなったそうだ。

ウム・アフメド(36)は、「シリアにいた頃は少なくともラマダンの10日前から準備に追われていた」という。

日没の食事のため、挽き割り麦にレンズ豆、それから米、チーズ、ナツメヤシなどを買っておかなければいけない。カマル・エディン(アプリコット)、リコリス(甘草)、タマリンドなどのジュース類も早くから準備していたという。

「親戚を訪ねてごちそうを楽しむ習慣は、難民キャンプでも変わりません。早くシリアに戻って、家族や友人とラマダンを祝いたいです」

ウム・アブドッラ(45)は、シリアでのラマダンをこう振り返る。

「ラマダン月が始まるとすぐに、知り合いに電話してあいさつをします。昔は、貧しい人や困っている人に毎日、必要なものがないか電話をして尋ねたものでした」

ラマダンの初日にはごちそうを用意し、それをご褒美がわりにして子供たちに半日だけでも断食してみようと励ました。この短い断食は「鳥の断食」と呼ばれている。

「懐かしい思い出です。ラマダンになると、ますます早く故郷に帰りたくなります」


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アル・ムサハラティ──夜明けを告げる人々
Directed by Yaser Al-Hariri / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

ラマダンの期間中、夜明け前の食事と礼拝のために人々を起こしてくれるのが「アル・ムサハラティ」だ。レダ・イブラヒム・サイードが、ザータリ難民キャンプでこの役割を務めるようになってからすでに3年がたつ。シリアでは人々を起こすためにドラムを叩きながら歩いたが、いまは代わりに水の入った瓶を使っているという。

まだ暗い空に響く彼の祈りは、ラマダンの朝の荘厳さを見る者に伝えてくれる。


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00:08-00:11 さぁ、起きてアッラーを称えよう。
00:12-00:14 スフール(夜明け前の食事)をとろう。
00:16-00:21 神を称賛するものは救われる。
00:24-00:27 アッラーの他に神はなし。モハンマドこそが神の使徒である。
00:28-00:32 起きなさい、アブ・ナディール、起きてスフールを食べよう。
00:34-00:36 夜が明けた。そして、いまこの瞬間、天地すべての主権がアッラーにあるのだ。
00:38-00:40 アッラーの他に神はなし。ムハンマドこそが神の使徒である。
00:43-00:46 起きなさい、アブ・ルストム、起きてスフールをとろう。


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