私の名前はアリ・アルジャドアです。私は現在、JENのアドミンマネージャーをしています。
2013年2月にコミュニティ動員マネージャーとしてJENで働き始めました。その頃、JENはザータリキャンプで衛生促進活動と衣類配布を行っていました。
ザータリキャンプは、シリア危機が始まった後2012年の7月に開設されました。ヨルダン国内、シリアとの国境から13kmのところにあります。ザータリ村に開設されたため、ザータリキャンプと名づけられました。キャンプの広さは6 km2に及びます。
キャンプ開設当初は、シリアの人びとは、安全な地を求め、荷物を何も持たずに自分たちの地を離れることを余儀なくされていました。彼らはヨルダンとの国境へと辿り着つくと、ヨルダン軍のサポートを受けてザータリキャンプにやって来ました。
日々、想定以上の大量の難民が次々とやってきて、NGOの支援が間に合わず、難民は不満を募らせていました。一方でNGO職員もまた、難民の受け入れから彼らが尊厳を持って生活できるようになるまで、多くの課題に直面してきました。
キャンプへの入居に際しては、到着後に各世帯単位で(1世帯平均5人)、キャンプの入り口に設けられたUNHCRの登録所にて登録を行います。その後、テントとマットレスを受け取り、コミュニティ動員スタッフによって、割り当てられた場所へと案内されます。毎日水と食料が配布されなければいけませんし、食料以外の生活必需品も必要です。また、医療サービス、高齢者・障がい者・新生児に対する公共サービスも確保されなければいけません。
キャンプへやってくる難民の数は、平均すると毎日100~200人でしたが、日によってはその数が3000人に昇ることもありました。その状況では、NGOが理想とする支援を実施することの難しさが容易に想像できると思います。
私は、シリア難民がザータリキャンプにやってきて定住するまでに、私たちのような人道支援団体が直面した困難や、何もなかったこの地が街のように変化を遂げたこの5年の間に起こった、キャンプ内の様々な進歩を多くの人に知ってほしいと思っています。
私は、難民が尊厳をもって生きられるよう尽力し、直面する課題に対応してきた全ての人道支援スタッフに感謝したいと思います。
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開設から5年が経ったザータリ難民キャンプ
PHOTO: SAMUEL ARANDA / THE NEW YORK TIMES
約8万人のシリア難民が生活するザータリ難民キャンプは、2017年7月で開設から5年を迎えた。シリア危機が勃発し、急ごしらえで造られたキャンプには、いまや数多くの商店や病院、学校が立ち並び、都市のような様相を呈している。
長引く避難生活のなかで、シリア難民たちの暮らしはどのように変化していったのか? インフラ整備やIT化が進み快適さが増した部分がある一方で、まだまだ満たされない思いもあるようだ。「ザ・ロード」の記者が住民たちに取材した。
「5年もここに暮らすことになるなんて、誰も想像しませんでした。ところが、時間はまばたきのような速さで過ぎ去っていったのです」
ザータリ難民キャンプに暮らす難民はみんなこう口をそろえる。
キャンプに初めて足を踏み入れたときには、誰もが数日でシリアに戻れるだろうと考えていた。どんなに悲観的な者でも、3~4ヵ月以上ここに留まることはないと──。
だが、シリア内戦の終わりはいまだに見えず、難民たちはザータリでの暮らしを続けざるを得なかった。先行きはまだ不透明だ。それでも彼らは依然として、故郷へ帰る日を夢見続けている。
ザータリ難民キャンプは、2012年7月にヨルダン北部のマフラック県に開設された。5年たったいまもなお拡大し続けており、キャンプというよりはまるで都市のようだ。ある統計によれば、ザータリ難民キャンプの規模は中東最大で、世界的に見ても最大級のクラスに入るという。
ザータリは、故郷シリアの国境からわずか15kmしか離れていない砂漠地帯にある。「ザ・ロード」ではキャンプ開設5周年を迎えるにあたり、数人の難民たちに取材し、長期にわたるキャンプ生活について語ってもらった。
アブ=ラエドは、ザータリに来た当初、ここに2ヵ月以上滞在することはないだろうと考えていたという。しかし、避難生活はすでに6年目に突入。彼の願いは、1日も早く故郷の村に帰ることだ。
「当初、難民たちはみんな布製のテントで暮らしていたうえに、何でも共有しなければなりませんでした。飲料水の入った水タンクだけでなく、トイレやシャワー、キッチンですらね。それが、コンテナハウスでの生活に変わると、共有していたものが各家庭に1つずつ設置されるようになりました」
ザータリでは、世界各国の人道支援団体が昼夜を惜しんで働き、インフラ整備を進めている。道路は舗装され、電気も通った。
現在は全家庭に上下水道をつなぐ工事がおこなわれている。完成すれば公共の水タンクから水汲みをする必要がなくなるので、これまで苦労して水を運んでいた女性たちが、重労働から解放される。
アブ=ユセフは「近いうちに家に帰れるから」と、毎晩のように家族を励ましてきた。ところが、気がつけばいつの間にか5年もの月日が流れていたという。
ザータリでの暮らしは最初のうちさまざまな問題があったが、いまはすっかり慣れた。アブ=ユセフは、家族とともに安全に暮らせるキャンプの生活に満足している。また、ザータリの教育プログラムはヨルダン教育省が管轄している。子供たちがちゃんとした教育を受けられることも、彼にとっては大きな安心材料のようだ。
アブ=イッサも、ザータリに着いたばかりのころは数週間ほどしか住まないだろうと考えていたが、いまのザータリでの生活は安定していると認める。
「開設したばかりのザータリには、小さなお店がいくつかあっただけでしたが、現在は、洋服屋やレストラン、床屋、仕立屋、大工、鍛冶屋など、ありとあらゆる店がそろっています」
「5年もここに暮らすことになるなんて、誰も想像しませんでした。ところが、時間はまばたきのような速さで過ぎ去っていったのです」
ザータリ難民キャンプに暮らす難民はみんなこう口をそろえる。
キャンプに初めて足を踏み入れたときには、誰もが数日でシリアに戻れるだろうと考えていた。どんなに悲観的な者でも、3~4ヵ月以上ここに留まることはないと──。
だが、シリア内戦の終わりはいまだに見えず、難民たちはザータリでの暮らしを続けざるを得なかった。先行きはまだ不透明だ。それでも彼らは依然として、故郷へ帰る日を夢見続けている。
ザータリ難民キャンプは、2012年7月にヨルダン北部のマフラック県に開設された。5年たったいまもなお拡大し続けており、キャンプというよりはまるで都市のようだ。ある統計によれば、ザータリ難民キャンプの規模は中東最大で、世界的に見ても最大級のクラスに入るという。
ザータリは、故郷シリアの国境からわずか15kmしか離れていない砂漠地帯にある。「ザ・ロード」ではキャンプ開設5周年を迎えるにあたり、数人の難民たちに取材し、長期にわたるキャンプ生活について語ってもらった。
アブ=ラエドは、ザータリに来た当初、ここに2ヵ月以上滞在することはないだろうと考えていたという。しかし、避難生活はすでに6年目に突入。彼の願いは、1日も早く故郷の村に帰ることだ。
「当初、難民たちはみんな布製のテントで暮らしていたうえに、何でも共有しなければなりませんでした。飲料水の入った水タンクだけでなく、トイレやシャワー、キッチンですらね。それが、コンテナハウスでの生活に変わると、共有していたものが各家庭に1つずつ設置されるようになりました」
ザータリでは、世界各国の人道支援団体が昼夜を惜しんで働き、インフラ整備を進めている。道路は舗装され、電気も通った。
現在は全家庭に上下水道をつなぐ工事がおこなわれている。完成すれば公共の水タンクから水汲みをする必要がなくなるので、これまで苦労して水を運んでいた女性たちが、重労働から解放される。
アブ=ユセフは「近いうちに家に帰れるから」と、毎晩のように家族を励ましてきた。ところが、気がつけばいつの間にか5年もの月日が流れていたという。
ザータリでの暮らしは最初のうちさまざまな問題があったが、いまはすっかり慣れた。アブ=ユセフは、家族とともに安全に暮らせるキャンプの生活に満足している。また、ザータリの教育プログラムはヨルダン教育省が管轄している。子供たちがちゃんとした教育を受けられることも、彼にとっては大きな安心材料のようだ。
アブ=イッサも、ザータリに着いたばかりのころは数週間ほどしか住まないだろうと考えていたが、いまのザータリでの生活は安定していると認める。
ザータリの目抜き通りは「シャンゼリゼ」と呼ばれている
PHOTO: SAMUEL ARANDA / THE NEW YORK TIMES
支援物資の受け取り方も変わった。かつてシリア難民たちは、支援団体のもとに物資を受け取りにいかなければならなかったが、現在はスマート・カードが導入されている。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に登録している難民なら誰でも、1人あたり月20ヨルダン・ディナール(約3200円)がカードにチャージされる。それが食料配給の代わりなのだ。
「お金がチャージされると、携帯にテキストメッセージが届きます。いまはそのお金で、キャンプ内にあるスーパーマーケットで食糧を買っています」
だが、もちろん問題がないわけではない。ザータリには、病院や保健センターなどさまざまな医療施設があるが、そこで働く専門的なスタッフが不足している。電気の供給も安定しているとは言えない。
4年前にザータリに来たオム=エハブも、「内戦中の故郷のことを考えれば、安全なだけでもありがたい」と話す。だが、彼女も我々にある切実な問題を語った。
「ザータリはインターネット環境がよくないので、ヨルダン国外にいる家族と話したくても、満足に話すことができません。早くこの問題が解決することを心から祈っています」
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夏のザータリ難民キャンプの午後は静かだ。灼熱の太陽が照り付ける昼間、人々はあまり表に出ない。その代わり日が暮れると、どんどん人が増えはじめる。
子供たちはカラフルな凧をあげ、サッカーに興じる。この時間が稼ぎどきとばかりに、商店もにわかに活気づく。レストランには食欲をそそる匂いが漂い、人々はショッピングを楽しむ。クラブは夜更けまで若者たちの熱気でいっぱいだ。
ザータリ難民キャンプの夜は長い。
The Road ×クーリエ・ジャポンの記事はこちらからもご覧いただけます。
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2017年9月現在、約8万人のシリア難民がザータリ難民キャンプで生活しています。現在、キャンプでは上下水道インフラの整備が進められています。この水道網の整備は、現在の給水車による給水に代わって、難民の方々にとって長期的に生活環境の改善につながるものです。
しかし、このインフラ工事は、砂埃や掘られた溝、土などにより、キャンプ内に不衛生な環境をも生み出しています。
私の名前はアマル、ザータリキャンプで衛生促進活動の担当として働いています。今回は、衛生促進活動について紹介したいと思います。
衛生促進活動の目的は、人口密度が高く、工事によって日々の水衛生活動に影響がでているザータリキャンプで、難民の方々に衛生知識を普及し、感染性の病気を予防または減少させることにあります。
この活動は、給水や衛生設備整備などと並行して行うことで、改善された安全な水や衛生設備へのアクセスとの相乗効果が期待されます。他の団体とともにキャンプの全ての区画で実施され、JENは3、4、5区画を担当しています。
シリア人コミュニティの衛生プロモーター(以下CHP)は衛生メッセージを広めるのに重要な役割を果たしています。彼らはお金を受け取ることなく、ボランティアとしてコミュニティに貢献しています。
CHPはメッセージに関するトレーニングを受けたのち近隣の人びとに対してグループセッションで衛生メッセージを伝えてます。自分たちの担当する地域で衛生メッセージを伝えることが彼らの役目です。
現在、私はJENの担当区域でCHPだけで衛生メッセージを伝えることができるよう、CHPの人数を増やそうとしています。しかし、募集、研修、メンバーの維持など、様々な課題があります。
募集の段階では、多くの難民が活動することに意欲を示しますが、ボランティアとして活動を継続できる人はわずかです。
また、宗教上、ボランティアは良い行いとみなされていますが、一部の女性は家族から他の難民と交流することを許されず、活動に参加することが出来ないなど参加への障害もあります。
長くこの活動に参加している人の中でも、経済的に困窮している人は、給料が払われる仕事が見つかると活動をやめてしまいます。
サルマさんは活発に活動をしているCHPの一人で、夫と二人の息子と暮らしています。彼女は2年間CHPとして活動しています。JENの活動に参加する以前、彼女は近所の人たちが間違った衛生行動を行っているのを見て、衛生促進活動が必要であると感じていました。
衛生促進活動の研修や活動に参加することで、たくさんの新しい友人ができ、自信を持つこともでき、知識も向上したと言っています。
【女性のCHPが自身の住居で衛生促進セッションを行っている様子】
【コミュニティセンターでの男性CHPとのミーティング】
新しいボランティアに衛生研修を行うことは時間と労力を必要とするため、やめていくボランティアの問題は深刻です。CHPと参加者のモチベーションを保つために、CHPの無料の奉仕への見返りと、参加者の動機の位置づけのためには衛生用品を配布することがあります。
一方でしかし、CHPメンバーと参加者が毎回渡せるわけではない衛生用品の配布物に期待してしまうと、渡す物がない時に活動の継続が難しくなります。
最近、私たちはCHPのモチベーションを高めるために、通常のグループセッションに代わってメッセージを発信する他の方法を模索しています。
例えば、あるCHPは、大人に比べて時間もあり、行動変容が早い子どもたちに教えることが、コミュニティにプラスの変化を与えるということに気が付きました。活動を辞めようとしたCHPのうちの何人かは子どもたちへの促進活動に参加し活動を継続することを決心しました。
この新しい試みが課題の解決策となり、また、多くのCHPが私たちとともに長い間活動してくれることを願っています。
私は難民の方の緊急支援や、NGOの仕事に深く携わる機会を得ることができるJENでの仕事を誇りに思っています。また、これまでのJENでの仕事の経験は私自身の知識や技術の向上にもつながっています。
チームのみんなと協力しながら、人びとの衛生に対する意識の向上や衛生行動の改善を試み、私たちが担当する3つの区域が一番清潔な区域としてキャンプのなかでよい見本になればと願っています。
アマル・アブオウン
衛生プロモーター
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8万人のシリア難民が避難生活を続ける「ザータリ難民キャンプ」を、この360度の映像で、訪れてみませんか?スマートフォンを見たい方向へ動かしたり、パソコンでマウスを操作することで全方向をご覧いただけます。場面が変わりますので、ぜひ最後までご覧ください。
ザータリキャンプでは9月に入り、雲も見られるようになり35℃を下回る日も出てきましたが、それでも40℃近い猛暑がいまだに続いています。
今回の「シリア難民支援レポート」では、
1.「キャッシュ・フォー・ワーク」という、ザータリキャンプ内で行われている「有償ボランティア」制度について。
2. JENがこの制度を通してコミュニティセンターの守衛をお願いしている女性をご紹介します。
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1.「キャッシュ・フォー・ワーク」とは
「キャッシュ・フォー・ワーク」(以下、「CFW」と表記)は、難民自らがキャンプ内で「有償ボランティア」を行い、キャンプ内の環境改善やサービス向上に貢献し、対価をもらうことで自らの生活改善を目的とした制度です。
日本では東日本大震災の復旧・復興支援でもこの制度が活用され、自らが地元の支援に取り組むことで、被災者自身の手で復興を行い、同時に自立支援にも繋がる制度として注目されました。
JENではこの制度を通じて、キャンプの清掃員やJENの施設の守衛、補修工事作業員をお願いしています。JENでは通常仕事を見つけるのが難しい障がい者や、女性も積極的に活用することを目指してしています。
JENがコミュニティセンターの守衛をお願いしているシリア難民女性、ラシャさんのインタビューをご紹介します。
シリアでの生活やヨルダンのザータリキャンプへ逃れて、大変であったキャンプ初期の頃の生活、そしてCFWとして働き始めてからの彼女の生活の変化などを話して頂きました。
2.「この仕事は私に自信を持たせてくれた」~ラシャさんへのインタビュー
「ラシャと言います。現在28歳でシリアのダラア県にあるサフ村の出身です。」
【JENスタッフのインタビューに応えるラシャさん(写真手前)】
「シリアでは以前結婚しており、娘も1人授かりました。しばらくして夫と離婚してからは家族のもとに戻り暮らしていました。その頃は娘も小さかったことから、ほとんどの時間を家で過ごしており、病院や買い物など、必要な時以外は特に外出もしない生活を送っていました。」
「内戦が始まり、2011年11月26日にここヨルダンのザータリ難民キャンプに避難しました。あの頃はとても苦しかったから今でも日付をはっきりと覚えているんです。」
「最初は家族と娘、計10人で1つのテントを共有しており、トイレとシャワーを他の大家族と共有。上水のタンクも共有だったのでいつも水を汲みにいかねばならず、しばしば自分たちがもらえるはずの水量がもらえない、という日もありました。」
「今年の7月2日からJENでコミュニティセンターの守衛として働き始めました。毎朝8:00から12:00までが私のシフトです。仕事の内容は門の開け閉めや、コミュニティセンターにある物品の管理、そして他団体から預かり物をした際はJENのスタッフに連絡します。あとはここの清掃や植物への水やりを行っています。」
「この仕事を始める前は1日、特にやることもなく過ごしていました。外出する機会があったとすれば、病院に行ったり、食糧の配給を受け取りに行くことくらいでした。しかしこの仕事を始めて、自分に自信が持てるようになりました。」
「家族を経済的に支えることもできるようになりましたし、『支えになっている』と考えられるようになってからは、精神的にも強くなれました。以前は女性のためのCFWはほとんどありませんでしたが、私がこの守衛の仕事につけたことなど、状況がどんどん改善されてきています。」
「CFWの機会は私のようなシングルマザーの家庭にとっては欠かすことのできない収入源となっています。」
【ラシャさんが守衛をしている第4地区にあるJENのコミュニティセンター】
JENではこのCFW制度を通して、ラシャさんのような女性や障がい者がいる家庭など、キャンプでの生活で現金収入を得にくい世帯の支援を今後とも続けていきます。
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