2014 年1月、ジェンは、UNHCR とのパートナーシップのもと、ザータリ難民キャンプでアラビア語の月刊雑誌を発行する新しい試みを始めました。
総面積約 6 平方キロメートルにわたるキャンプでは、別の地区に住んでいる住民同士がコミュニケーションをとれる機会はほとんどありません。この月刊雑誌は、住民自身が書いた記事を通じて、そのコミュニケーションギャップをうめるという目的で作られています。
さらに、この雑誌は、住民がキャンプ内でより良い生活をおくれるよう、国連機関や他の人道支援団体のメッセージを、難民の視点で書かれた記事によって広めることも目的としています。
雑誌が住民の創造性を活かせる場になると同時に、住民がキャンプという厳しい環境でそれでもたくましく生きている、その強さを伝えることができればと思っています。
4月末に完成した雑誌の第1号は、キャンプ内の約2万世帯に配布されました。初号に掲載された記事は多岐にわたります。難民衛生プロモーターが書いた環境衛生を保つ重要さ、特にキャンプでのゴミの処理の仕方に関する記事、レクリエーションセンターで遊ぶ子どもたちが書いた記事、キャンプで提供されている栄養プログラムによって子どもの健康状態が改善した母親の記事、そしてシリアでの生活を思い出し、いつか祖国に帰ることを祈る少女の詩などが、12ページの雑誌に写真とともに掲載されています。
【雑誌を年下の子どもたちに読み聞かせている少女】
【ザータリマガジンの初号を読む父と子ども】
雑誌の「アル・タリク (道路)」というタイトルは、ザータリキャンプに来るまでのシリア難民の長い道のりを表すと同時に、ザータリキャンプでの生活は一時的なもので、いつかシリアに帰る道は続いているという願いを込めてつけられました。
雑誌に掲載されている記事は住民が書いているものの、編集や製作は現在日本人とヨルダン人スタッフが全面的に担っています。キャンプ内でのこの雑誌の認知度を上げると同時に、他団体と協力し、ジャーナリズムやグラフィックデザインなど雑誌編集に関連する技術訓練を住民に提供する予定です。
雑誌発行のオーナーシップを徐々に住民に移行し、特にキャンプ住民の大半を占める青少年が雑誌作成に携わることにより、生活の向上につながることを期待しています。
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JENが2012年9月からザータリ難民キャンプでの活動を開始して、既に1年と9か月がたちます。
私が最初にザータリキャンプを訪れたのは2013年1月でした。その頃、ザータリはまさに拡大途中で、テントが密集したエリアを抜けると、新しくやってくる難民を受け入れるために整備された無人の仮設住宅が並んでいました。まだ、水衛生設備などが整備されていない地区もあり、混沌としているというのが私の印象でした。それ以来ザータリを訪れることはほとんどなかったので、今でもザータリと言えばそのときの印象のままです。
それから約1年半たった今、ザータリキャンプは全く違う印象を初めて訪れる人に与えているようです。
先日、JENの活動への理解を深めることを目的として、ホスト・コミュニティ事業に関わっているスタッフ、そして経理総務スタッフが、初めてザータリキャンプに行ってきました。ザータリキャンプで働くスタッフは毎日ザータリキャンプに行っていますが、他の事業や経理総務に関わっているスタッフがザータリキャンプに行く機会はほとんどありません。毎日のように「ザータリキャンプ」という言葉を聞き、話しているにもかかわらず、近くて遠い存在なのです。
ザータリは彼らが想像していたものとは全く違ったようです。それは「街」でした。もちろんすべてではありませんが、たいがいのものがキャンプでは手に入ります。宝石店もあれば、ウェディングドレスを売っているお店もあったそうです。人々がキャンプ内の生活に適応している、そのたくましさに圧倒された、と言っていました。
避難生活から日常へ。ザータリキャンプはそのまさに過渡期にあります。1年後にどうなっているのか今はまだわかりません。それでも人々が安全に安心して暮らせるよう、私たちは今できること、今すべきことを行っています。
廣瀬 美紀 (プログラム・オフィサー)
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1年以上前から準備が進められていた、ヨルダンで2番目の規模となるアズラック難民キャンプがいよいよオープンします。
アズラック難民キャンプは2km²の敷地面積があり、ザータリ難民キャンプ(8km²)よりも広いスペースが各家族に提供される予定です。ザータリ難民キャンプはまるで人口が密集した一つの街のようですが、アズラック難民キャンプは、いくつかの小さい村が集合したような構成になっています。
アズラックという小さな町は、過去にイラク人の難民を受け入れていましたが、シリアとは国境を接していません。シリア難民は今まで通りラバ・サハン(注:難民の登録地)からヨルダンに入国し、ほとんどの難民がアズラック難民キャンプに移る予定になっています。
今後、ザータリ難民キャンプが新たに受け入れる難民は、例えばすでにザータリに親戚が避難してきている、あるいは重傷を負っているなど特別なケースのみに限定されます。
この新しい難民キャンプの開設により、ザータリ難民キャンプの人口が安定し、キャンプの新しいフェーズへ移行する助けにもなります。国連機関やNGOが支援してきたザータリ難民キャンプには、2年もの長期間に渡って避難生活を送る難民が多数おり、またその滞在は今後も長期化する見通しとなっています。彼らが必要とする支援は、すでに緊急支援の段階から、これまで実施してきたプログラムの統合や改善などを通じて、より長期的な視点での支援を実施する段階に移行しつつあるのです。
このザータリ難民キャンプの人口の安定化は、難民の自己管理、そして自立を促すコミュニティの再構築に大きく寄与することが期待されています。
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2012年7月に設立されたザータリ難民キャンプはもうすぐ3年目に入ります。設立されてからの1年間不安定だったキャンプの治安状況は、ヨルダン警察との連携、徹底したキャンプマネージメントや様々な機関や団体による充実したサービスにより安定しつつあり、住民による投石などは時々発生するものの、最近では目立った事件はありませんでした。
ところが2014年4月5日、キャンプ内の2地区で起こったヨルダン警察と難民間の小競り合いがエスカレートし、同地区に住む難民3千人以上を巻き込んだ暴動に発展しました。この暴動により、多くのテントや仮設住宅が焼かれ、警察官約25名を含む多数の負傷者および難民1人の死亡者が出ました。明確な暴動の原因はまだ調査中ということで、発表はされていません。
【キャンプであがった煙】
暴動が始まってすぐに、キャンプ内で活動するNGO団体のすべてのスタッフは安全確保のため、他の場所に移動しました。暴動は夕方に発生しましたが、当時キャンプ内に残っていたJENのスタッフは、夜勤の衣料配布チームの2名のみであったため、事業に大きな影響はありませんでした。
暴動は2地区に限定して発生し、一晩で収まったものの、状況を注視する必要があったため、翌日の日曜日もキャンプスタッフはキャンプには行かず待機していました。日曜日の午後には事態も収まり、バスでザータリに到着した新規難民に衣料配布を開始するため、JENもスタッフをキャンプに送りました。
暴動が発生した2地区は、新しく設立された地区で、暴動に参加した難民も最近キャンプに到着したばかりで、まだ生活が不安定な状態にある方々が大半ということでした。新しい地区は、当初設立された地区よりもサービスが行き届いていないことから、不便な生活を強いられる難民の方々の不満が、簡単に暴動につながる可能性があるという現状を、再度強く自覚させられる出来事でした。
10万人以上の難民が6平方キロメートルの土地に住んでいるザータリ難民キャンプでは、地区ごとによって、提供されている支援や質が変わってしまうという事態は残念ながら避けられません。
実施している支援内容がコミュニティのニーズに合うよう、JENではコミュニティ活動員を通して定期的に難民の方々と会合やヒアリングを行い、彼らの質問や疑問に答えながら、コミュニティとともに活動を行っています。
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みなさんは3月22日が何の日かご存じでしょうか。
…正解は、国連総会で定められた「世界水の日」という水の大切さを考える日です。ここヨルダンでも水問題は他人事ではありません。なぜならヨルダンは、世界で4番目に水不足に悩む国なのです。特に今年は雨季の降水量が少なく、乾季の夏に向けて水不足が懸念されています。
ヨルダンの家や学校には給水タンクが設置されており、週に数回水が供給されて、タンクに貯められ、そこから水を使う仕組みになっています。もし水を出しっぱなしにしていたら、あっという間に給水タンクの水が空になってしまいます。ヨルダンでは、水はもっとも大切に扱わなくてはいけない資源の一つなのです。
JENは、学校の水タンクやトイレ・水飲み場など、水衛生に関する設備の修復を行うとともに、シリア難民児童とヨルダン人児童の両生徒に向けて衛生教育も行っています。その衛生教育の一環として、病気の予防法とともに、節水の重要性についても教えています。
そこで、去る3月20日、JENが補修工事と衛生教育を行った学校で、「世界水の日」のイベントを開催しました。
生徒たちの披露してくれた劇や歌を通して、先生や子どもたち、イベントに参加したみんなが、水と衛生の重要性について考えるよい機会になったと思います。
【「水のしずく」と「手」と「石鹸」に扮した生徒たちと記念写真をぱちり】
JENのホストコミュニティ担当の衛生プロモーターたちは、ヨルダンの学校を縦横無尽に駆け回って先生たちに衛生教育の指導を行っています。現在までに142校の先生たちに衛生教育の指導を行い、124校の生徒に衛生キットを配ってきました。
しかし、節水に対する意識や衛生観念は一朝一夕で簡単に変えられることではありません。 JENは学校の先生たちに衛生教育の訓練を行うことで、訓練を受けた先生たちが毎日継続して子どもたちに手洗いなどの習慣を教えることを目指しています。私たちJENがいなくなっても、今の子どもたちが卒業した後も、この先生たちによって衛生教育がなされていくことを目標に、JENの衛生プロモーターたちは日々指導を行っています。
【JENの衛生プロモーターたち。普段はザータリ難民キャンプで働く衛生プロモーターも手伝いに駆けつけてくれました】
世界水の日。日本にいるとなかなか馴染みのない日かもしれません。しかし、世界には深刻な水不足や不衛生な水で子どもたちが命を落としているという事実に目を向ける日として、日本でも浸透することを願っています。
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