先日補修の工事が終了した学校を訪ねた際、ついでにホストコミュニティの現状を確かめるために、シリア難民が集まっている通りへ現地スタッフとともに向かいました。場所はアンマン市内です。
そこでは想像を絶するような暮らしをしている難民家族がいらっしゃいました。
この家族は4人の息子と4人の娘がいる10人という大家族です。紛争により家を破壊されたため3か月前にヨルダンへ避難して来られ、最初はザータリ難民キャンプにいたものの、仕事を探すため、また友人の勧めによりアンマン市内に越してきた、ということでした。家の中には隣接した家屋からの排水が壁から常に染み出ており、水たまりから部屋全体に悪臭が漂っていました。
©JEN: 隣の家からの排水が壁を伝って流れてきていると説明中の父親。手前には汚水が溜まっていた
難民登録はしてありますが、支援を受けられていません。支援を受けるために、再度登録しなおそうにも登録場所まで行く交通費がありません。
そして、8人の子どもたちは誰ひとり学校へ通ってはいません。なぜなら、父親の働き口が見つからず、代わりに8歳と10歳の息子が小物を売ることで生計を立てている状況なのです。この二人はもちろんほかの子どもたちも学校へ通わせてもらえるだけの収入もありません。
©JEN: カバーもないマットレスと枕(上)テーブルや十分な食器もない家(下)
3年以上就学から離れてしまうとヨルダン政府から就学能力を疑われ、入学を拒否される可能性があり、一刻を争う事態になってきています。
スペースが足りなくて入学を断られることのないように、JENは教室建設を続けています。そして同時に行っている衛生教育を通じ、学校だけでなく家庭でも実践し、水因性の病気から自分たち自身で守ることのできる知識を教えていきます。
【JENでは、皆様からのご寄付を受け付けています。ご協力をよろしくお願いします。
ご寄付は、こちらから受け付けております】
【JEN設立20周年記念の取り組みについてはこちら】
ヨルダンで4番目に大きい『街』といわれるザータリ難民キャンプでは、人々が普通に日常生活を送ることができるように、UNHCRやUNICEFを含む様々な支援団体により、水・電気などが無償で提供されています。人口約86000人のこのキャンプでは、そのような電気代や水などに供給にかかる光熱費が、支援の大きな割合を占めています。
前回の支援速報に書いた通り、キャンプ内の水の供給は、支援団体により調整された水トラックで、キャンプの各箇所にある公共の水タンクに運ばれます。電気はキャンプ内にある外灯やスーパーマーケットなどの主なサービスだけにつながれています。しかし、そうした外灯などから、難民の人々が戸別に電線を配線してしまうケースが後を立ちません。
【外灯から戸別に繋がれたいくつもの電線】
このような違法の接続により、キャンプ内の電気代は月々50万ドル(約5千万円)にも上り、キャンプ運営に必要な支援の大きな割合を占めています。特に、この電気の使用量の半分以上がキャンプのごく一部、市場やお店の集まるシャンゼリゼ通りで使われています。
シャンゼリゼ通りには飲食店や衣服、日用品などを売っている約60の店舗が集まり、いつも人でにぎわっています。ここでは、食品や雑貨をはじめ、洗濯機、テレビ、扇風機などの電化製品も買う事ができます。夏になり、日中の気温が35度以上に上がるザータリでは、エアコンを持っているお宅もあるという事です。シャンゼリゼで見たゲームセンターでは、子どもたちが数台あるパソコンでゲームをして遊んでいました。このような発展の中、ザータリキャンプ内の電気の使用量が非常に高いのも不思議ではありません。
【シャンゼリゼ通りにある電化製品のお店】
【ゲームセンターでは子どもたちがパソコンのゲームを楽しんでいました】
キャンプの長期化とキャンプ運営に要するコストを考えると、早急にコスト回収に焦点を当てた援助戦略の採用を検討する必要があります。
そのため支援も、個々に消費した電気や水などの料金を、店主など、払える人が支払うというシステムを導入する方向に変わりつつあります。その最初の段階として、UNHCRは近々、日中に数時間キャンプの電力を止め、キャンプ内の電力消費量を低減させるとともに、人々の料金システムに対する意識を高めるキャンペーンを実施する予定です。
難民の生活に合ったキャンプマネージメントを行うには、難民コミュニティーの意見が必要不可欠となるため、上記のような方針も、難民との緊密な連携により設定されています。
このような長期的な計画は、電気だけではなく、キャンプ内の水の供給にも必要です。JENは12地区あるうちの3地区で水衛生の統括団体として活動しているため、住民に水をより効率的かつ効果的に配布でき、キャンプでより快適で持続可能な生活が送れるよう、他の水衛生統括団体やUNICEFと協働で、水供給のシステムを見直しています。
【JENでは、皆様からのご寄付を受け付けています。ご協力をよろしくお願いします。
ご寄付は、こちらから受け付けております】
【JEN設立20周年記念の取り組みについてはこちら】
5月ごろから徐々に暑くなり始めたキャンプでは、気温の上昇と共に衛生状況の悪化が懸念されています。避難民の方たちは、キャンプ内各地に設置された給水タンクの水を、飲料水として利用しています。水は毎日補給されていますが、それを貯蔵する水タンクそのものが汚れて不衛生の元となるのを防ぐために、JENは水衛生を担当しているキャンプ内3つの地区でタンクの塩素消毒を兼ねた掃除を始めました。
【スタッフが屋根にのぼり、タンクの掃除をしています】
JENの担当地区には311個のタンクが設置されており、1日10個~15個のペースで清掃しています。避難民の方々が水によって健康を害することがないよう、全力で支援活動をさせていただきます。
【塩素消毒のためブラッシング作業をしています】
【JENでは、皆様からのご寄付を受け付けています。ご協力をよろしくお願いします。
ご寄付は、こちらから受け付けております】
【JEN設立20周年記念の取り組みについてはこちら】
もともと生徒数が多く窮屈だったヨルダンの公立学校へ、多くのシリア難民児童が入学してきたことにより、子どもたちの学習環境が悪化していました。教室は非常に手狭になり、身動きすら満足にとれないような教室もしばしば見受けられました。
こうした学習環境を改善するために、教育省はやむなく午前・午後に授業をする二部制を導入し対応しましたが、新たに別の問題が発生しました。二部制は一部制に比べて授業時間が短くなります。また毎月午前・午後の授業を入れ替えるために、生徒たちの生活習慣がなかなか定着しないという状況に陥っています。
そこで、JENのホストコミュニティプログラムの一つとして、教室の増設、トイレや水飲み場をはじめとする水衛生施設の補修を行っています。シリア難民の増加がいちじるしいイルビッド県、マフラク県、ザルカ県の3県を対象に、中でも特に他の学校に徒歩で通えないような場所に位置する学校を対象に活動を行っています。
そしてこのたび、これらの県の4つの学校において、12の教室が完成しました。
【ぎゅうぎゅう詰めの教室。身動きもとれない状態の生徒たち】
【多くの生徒による過度の頻度で使用したために壊れてしまっているトイレ設備と水飲み場】
【女性のエンジニアによって考えられた教室の内部デザイン】
シリア危機が起きてから3年経過した今、シリア難民児童の教育は非常に深刻な問題となってきています。この深刻な状況に対応するため、JENは今後も教室建設プロジェクトをヨルダンで進め、子ども達が教育を受ける機会が奪われることのないよう、尽力していきます。
【JENでは、皆様からのご寄付を受け付けています。ご協力をよろしくお願いします。
ご寄付は、こちらから受け付けております】
6月5日は「世界環境の日」。この日に合わせて、JENはザータリ難民キャンプの第3、4、5地区にて6月3日から3日間、衛生促進イベントを実施しました。
1日目と2日目はキャンプの子どもたちを対象に、衛生についてのメッセージを伝える活動を行いました。
【風船に衛生に関するメッセージを書くJENの衛生プロモーター】
手や顔を洗う、歯を磨く、などの衛生に関する習慣は、一朝一夕で身に着くものではありません。よって、このように機会があるごとに繰り返しメッセージを伝えていくことが重要です。また、子どもたちが自ら興味を持って楽しく衛生について学べるよう、JENの衛生プロモーターたちは工夫を凝らしています。
【ゲームを通して歯の磨き方をデモンストレーション】
【歌や踊りを使って衛生について学ぶ子どもたち】
3日目は、「水の安全と節水」について、キャンプに住む大人たちを対象に、安全でない水が原因で引き起こされる下痢などの病気の予防方法や節水について話す場が設けられました。
【下痢の予防や節水について話し合い、アドバイスするJENの衛生プロモーター】
また、同時に「環境」についてのメッセージを伝える手段として、セージの苗を植える活動を行いました。砂漠の真ん中にあるザータリ難民キャンプには、現在木々などが無く、大変水はけが悪いうえ、ハエなどの発生が問題となっています。キャンプにおいて多くの人々が今後も生活していく環境を保つためには、水供給や手洗いの普及だけでなく、難民の方々自らが環境を守るよう心掛けることが必要なのです。
【3日間のイベントで大活躍したJENの衛生プロモーター達。チームワークは抜群です】
【JENでは、皆様からのご寄付を受け付けています。ご協力をよろしくお願いします。
ご寄付は、こちらから受け付けております】