シリア難民支援速報

新たな教室が3校でようやく完成!

2015.03.12

ヨルダンのあちこちで色とりどりの花が咲きだしました。もうすぐ春がやってきます。
公立学校では2月の2週目から新学期が始まりました。

【新学期から使用が始まった教室(アル・マターラ男女混合小学校)】
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シリア国境に近い北部3県(イルビッド県・マフラク県・アジュルン県)は、これまで多くのシリア難民を受け入れてきました。対象校の1つが位置するナイーメ地区の人口は、ヨルダン人よりもシリア難民のほうが多いというシリア難民の密集地です。

この地区から4キロ程離れた場所に男子小学校があるものの、徒歩で通うには遠いため、この地域で女子児童を受け入れている小学校は、このナイーメ小学校だけでした。学校側は制限人数を超えていても受け入れを続けていました。なので、いつも教室は混雑していました。

【狭い教室で学ぶ女子生徒たち(ナイーメ男女混合小学校)】
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現在ホストコミュニティの学校では、スペースが狭すぎたり、プレハブ校舎だったり、二部制だったりと学習環境が悪いため、学校に通わせないという選択をしている保護者がいるということがわかっています。

JENの教室建設による支援は、こうした現状を踏まえ、シリア難民児童およびヨルダン人の生徒たちの学習環境を整えることを通して、教室スペースが足りないという問題から発生する、教育の機会の喪失・生徒のドロップアウト、さらに教育の質の低下をも防げる、一石二鳥ならぬ三鳥のプロジェクトなのです。

シリア難民およびヨルダン人にとって困難な状況が続いていますが、シリア難民児童およびヨルダン人児童がともにJENが提供した適切な環境で学び続けることで、両国の将来に期待を持つことができると信じています。

前回のホストコミュニティでの活動に関する支援速報でお伝えした、ヨルダンの全公立学校を対象とした調査は現在も続いていますが、その調査結果を利用して、今後もJENは学校の適切な学習環境づくりに貢献していきます。

【裏側から見た完成した教室(ナイーメ混合小学校)】
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【完成した学校内部の様子(サックァー・クライシュ男子小学校)】
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【JENでは、皆様からのご寄付を受け付けています。ご協力をよろしくお願いします。
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jordan


ザータリ難民キャンプで格闘するシリア難民と、その人々を支えるJENの役割

2015.02.26

日本では、日常生活において、家庭にトイレとシャワーがあることはあたりまえであり、その大切さについて考えたりするでしょうか。ごく稀に壊れたり、お湯の出が悪くなったときくらいでしょうか。

そうした日常とかけ離れた緊急下の難民キャンプにおいては、屋外に設置された施設を共同で使う生活を余儀なくされます。JENが支援活動を行っているザータリ難民キャンプでは、約84,000人が暮らしており、難民の方全員が公共のトイレ・シャワーを使用できる環境を整えています。しかしながら、その管理は困難を伴います。

清潔で使用可能な状態を維持するには、清掃とメンテナンスが必要ですが、時として意図的に施設が壊されることもあります。そのような場合に最も困るのはいつも、経済的あるいは身体的に弱い立場にある方々です。

【破壊された施設】
150226 ①破壊された施設

JENは施設の修理を日常的に行っていますが、時には使用不能になった施設の修復作業を行います。住まいの近くに清潔なトイレやシャワーがあることは、周囲の衛生環境を保つために必須であり、感染症の予防のためにも大切なものです。

【施設の修復作業をしています】
150226 ②修復中

【修復が終わりました】
150226 ③修復完了

難民の方々は、それぞれの生活スタイルによって住みたい地区も異なるため(親戚の近く、子どもがいれば学校の近く等)、キャンプ内での移動が頻繁に起きています。そのため、難民の方々が移住した地区に、トイレ・シャワーの新設が必要な場合もあります。JENは先月、約300人が新たに移住した地域で、新しい施設を建設しました。

【新しい施設を設置しています】
150226 ④建設中

【施設が完成しました】
150226 ⑤完成

これらの施設を管理するのは難民の方々からなる水衛生委員会であり、JENが建設した施設を難民自身が運営します。これらの活動を通じて難民の方々の暮らしが少しでも良くなるよう、支援活動を続けてまいります。

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jordan


ザータリ難民キャンプを襲った暴風雪「フーダ」<後編>

2015.02.12

2日目に日が昇った頃には、水だけでなく12センチ近くの雪が地面を覆っていました。JENが手配した12台のトラックは迅速に排水を行ったのですが、トラックの処理能力よりももっと速く雪が解け始めました。そして、雨と雪がより激しくなりました。別の団体は浄化槽をきれいにするトラックも導入しました。このような状況に対応するため、JENのチームは、この日も夜遅くまで、水位を安定させるために働き続けました。

3日目も、とても長くて寒い1日でした。他の団体も排水作業のために追加のトラックを導入しました。JENのチームはたゆまず作業を続け、夜遅くには、かなり状況を改善できました。約60%の水を、キャンプの外へと汲み出すことができたのです。

【排水作業は泥だらけになる作業です】
150129 ③排水作業

その晩、気温は氷点下を大きく下回りました。国中の道路は凍結のために閉鎖されました。

4日目の朝に日が昇ると、また電話が鳴り始め、疲れ切ったJENのチームは厚着をして作業を続けるために出かけました。この日には事態がどんどん収拾に向かっていきました。稼働させるトラックの数や、日中の対応も減らすことができました。それでも、全ての水が排除され、キャンプが通常の状態に戻るまでには、さらに1週間かかりました。

結局、「フーダ」は2013年にアンマンが経験した大雪の被害よりも、より深刻な被害をヨルダン北部地域にもたらしたのでした。その地域に長年暮らしている住民によると、このような深刻な被害は初めてだったとのことでした。JENの緊急チームは、厳しい寒さと水浸しという状況にも勇敢に立ち向かい、キャンプの人たちの生活に支障が出ないように迅速に対応したのです。

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jordan


ザータリ難民キャンプを襲った暴風雪「フーダ」<前編>

2015.01.29

2015年1月初旬に、暴風雪の予報が発表されました。深刻な被害をもたらす恐れがあるとのことで「フーダ」と名付けられました。

アンマンでは、今回の雪は2013年に経験した大雪よりも少ないと予測されていましたが、政府は「フーダが襲来する日は休日にする」と前日に発表しました。

キャンプでは、大きなタンク、ホースや吸水ポンプを積んだトラックを出動させ、水を吸い上げ排水する必要があります。そのため、嵐の前日には、多くのスタッフが予期せぬ休日に喜んでいる中、JENのメンテナンスチームのメンバーとキャンプ近くに住むスタッフは、嵐に対応する緊急計画を見直し、対応するスタッフを5人ずつの2つのシフトに分け、必要に応じて夜通し作業を続けられるように準備しました。前回に水がたまった場所も地図で確認し、今回の排水作業の間にスタッフ間で連絡を取り合う方法も決めました。

翌朝、強風が吹き荒れました。緊急チームは、ほとんど1日中、水タンクの固定作業をすることになりました。水タンクは重いので吹き飛ばされることはないだろうと思っていたのですが、予想以上に風が強かったためです。私たちが使用しているキャラバン(仮設住宅)の防水シートと屋根の一部も吹き飛ばされてしまいました。

正午頃には雨が降り始めました。初めは弱かったのですが、どんどん激しくなり、緊急チームのリーダー・ラミは、排水用トラックの出動を命じました。まず3台、さらに3台、数時間後にはもう4台出動させました。気温が下がり、雨が雪に変わりました。

最初のシフトの者たちだけでは対処しきれず、別シフトのスタッフも作業に加わりました。私の携帯電話は排水用トラックを求める緊急要請で鳴り続けました。キャラバンの中には浸水しているものもありました。道は冠水してしまい緊急車両も通れませんでした。水が浄化槽に流れ込み、汚水があふれ出しました。ある学校は浸水して教科書が水浸しになりそうになり、テントは雪の重みで押しつぶされました。このような深刻な事態になったため、翌日用に12台のトラックを手配しました。

<次回に続く>

【テントが雪につぶされてしまっています】
150129 ①雪につぶされたテント 

【ザータリ難民キャンプにて、嵐の中休み】
150129 ②嵐の中休み

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jordan


ザータリ難民キャンプでの排水作業

2015.01.15

昨年11月の第4週にヨルダンでは大雨が降りました。ザータリ難民キャンプは水はけが非常に悪く、少しの雨でもテントや仮設住宅が浸水しやすいため、キャンプに住むシリア難民にとって雨は多くの問題を引き起こします。

そんな中でも、一昨年はテントに住んでいた難民のほとんどが、昨年には地面から持ち上げられた仮設住宅へ入居することができていたため、雨風をしのげることができ、当時と比べるとキャンプでの現状は飛躍的に改善されました。

また、国連機関や他団体が協働で道路の舗装事業を行ったことにより、主要道路の冠水が避けられ、雨期の移動がそこまで大変ではなくなりました。

さらに、排水溝などの設置と基本的な雨水排水システムが作られたため、キャンプの地区内に溜まってしまっていた雨水がキャンプの外に流れるような仕組みになり、雨による被害は減ったようにみられます。

しかし、1、2、11、12区など古い地区で、ザータリ難民キャンプ全体でみると低地に位置するキャンプの南西部は、地面の高低の差などから雨水排水システムがあまりうまく機能しなかったり、他の地区で見られるような比較的水はけの良い砂利の地面ではなく、泥の地面であることから、未だに浸水や冠水のリスクが高いのが現状です。

悪いケースでは、仮設住宅の前に30センチ以上の水たまりができてしまい、子どもたちが外へ出られないため、学校に登校できないといった事態も招きます。また、垂れ流されている排水が混じった雨水が学校の校庭を冠水させ、深刻な衛生リスクを及ぼすこともあります。

【雨水によって冠水した校庭。右にあるのが仮設トイレです】
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【汚い雨水が教室の中にも入ってしまいます】
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そのような課題を前に、JENは雨の緊急時に排水活動を速やかに行うため、排水トラックを管理したり、シリア難民のコミュニティと協働で排水の必要な地域をいち早く把握したりするためのチームを発足しました。

普段は水衛生に取り組む彼らですが、雨が降った時は就業時間外でもキャンプに残り、トラックを浸水地域に誘導して排水活動を行うとともに、電線が冠水し漏電などのリスクがある場合は難民のコミュニティリーダーと協働で情報の伝達などに取り組みました。雨がひどい日などは、午前2時や3時までキャンプ内に残り、緊急事態に対応することもありました。

【夜の排水作業のための準備をするJEN排水チーム】
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特に学校が浸水すると、次の日に子どもたちが安全面と衛生面のリスクから学校に登校できなくなる可能性が出てきます。そのため、JENの排水チームは学校の排水を最優先させ、子どもたちが安心して勉強できる環境を整備することに努めました。

このような不断の努力により、子どもたちや先生が大きな問題もなく普段通り学校に通学することができ、家族も安全で快適な生活を継続的に送ることができました。

【雨水を吸い取る排水チームの一員】
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【一日の雨でもこのように道路が冠水してしまいます】
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難民キャンプでは、雨という小さな変化でも、そこに住む住人にとっては大きな課題に繋がることが頻繁に起きます。
これからも継続して安全かつ快適なヨルダンでの避難生活を送れるように、2015年もJENはザータリキャンプとホストコミュニティにおいて様々なプロジェクトを行っていきます。

2014年はご支援いただき本当にありがとうございました。今年もよりたくさんの情報を現場から届けられるよう頑張ります!

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