不安定な暮らしが続くザータリ難民キャンプでは、「20年前の慣習」と見なされていた若年婚が急増している。その背景には何があるのか。自身も若年婚の経験者である男性記者が、難民たちに取材した。
なぜいま「若年婚」が急増しているのか
Text by Louay Saeed
ザータリ難民キャンプの住人の離婚率は高い。その一方で、若年婚も増え続けている。
キャンプ内では若年婚に対し、賛否両論の声があがっているが、「いつまでも独身のままでいたくない」という理由から若年婚に肯定的な女性も多い。だが、早すぎる結婚によって生じるさまざまな問題が認識されていないのも事実だ。
我々はキャンプに暮らす人々に若年婚についてどう思うか取材した。3人の娘の父親であるアブ・イムラン(50)は、若年婚反対派である。
「娘たちが精神的に成熟して世のなかを理解するまで、絶対、結婚を許しません。年齢で言えば18歳以上でしょうか。若年婚を許せば、結局娘たちを苦しめることになる。娘たちにはまずは勉強してもらいたい。結婚はその後です」
アブ・ハリードもイムランの意見に同調する。
「シリア内戦が起きる以前、若年婚はそこまで多くありませんでした。いまではザータリ難民キャンプで住民が集まると、必ず結婚、特に若年婚の話になります。(若年婚が増加する理由は)いろいろとあると思います。難民キャンプで暮らすうえで、若い女性は保護されなければならず、夫の家で守られるべきだと考える人が増えているのでしょう」
キャンプの第6地区で会ったウム・ハディは、14歳の娘を嫁がせた親戚の話をしてくれた。
「親同士が友人だったんです。新郎は17歳でしたが、2人は結婚して3ヵ月後に離婚しました。妻が家事をこなせなかったというのがその理由です。結婚の話を断ると両家の関係が悪くなると私の親戚は心配したようですが、14歳という年齢は、やはり結婚には早すぎます」
アブ・オバダ(40)によれば、若年婚は男性よりも女性に強い影響を与えるという。
「若年婚によって、少女たちは自分の夢をあきらめなければなりません。我々の社会では、女性と男性に対する見方が違うのです」
20年前は、若年婚は珍しいことではなかった。だが、やはり若年婚は長期的にはうまくいかない場合が多い。若年婚反対派のアブ・バシャールも若年婚の多くは失敗に終わると話す。若い女性がちゃんと教育を受けて生きる術を学ぶほうが、夫婦にとっても良い結果となると彼は考えている。
キャンプで支援活動をするNGO団体などが、若年婚の減少に一役買っていると考えている人は多い。ウム・スレイマン(55)は、若年婚に関するあるセッションに参加したことで、そのリスクをよく理解できたと語る。
では、若年婚の賛成派はどのように考えているのだろうか。
ウム・ラーエド(57)は、「女性のいる場所は台所」だと考えている。若年婚によって女性は守られるし、若いうちに結婚しておかないと「行かず後家」になってしまうと彼女は心配する。ラーエドは、娘たちの教育にはあまり重きをおかず、全員若いうちに結婚させた。
アブ・マルワン(62)も、「我々の時代、若年婚は男性にも女性にも何の問題もなかった」と話す。
かくいう筆者の私も、16歳のとき14歳の妻と結婚し、娘たちを早く嫁がせた。いまは孫が結婚する年齢になっている。それゆえ、個人的には若年婚が問題だとは思っていない。夫のそばにいることほど、若い女性の安全が保証されることはないと思うから。
本を読む喜び
今日は待ちに待った本の日。支援団体から子どもたちのために児童書が配られる。内容は愛や平和について書かれたものばかりで、子どもたちのために厳選されたものだ。
娯楽の少ない難民キャンプでは、本はとても貴重だ。子どもたちは我先にと本を受け取り、夢中になって読みふける。
この動画のために特別に作曲されたヨルダンの人気バンド「Zaman Al Zaatar」の楽曲も素晴らしい。
The Road ×クーリエ・ジャポンの記事はこちらからもご覧いただけます。
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