(写真:左から/木山啓子、品川女子学院校長 漆紫穂子さん)
チャレンジしろと言っておいて、失敗を評価しなければ、誰もチャレンジしなくなる
木山:
生徒たちに、起業体験をさせたり、実際に動かす場を作るということは、言葉では計り知れないご苦労があると思いますが、先生たちのふるまいなど気を付けている秘訣などはありますか。
漆:
失敗を評価する事でしょうか。失敗した時に、それを「良い失敗」と「悪い失敗」に分けて、何もやらない・変えないで起きたのは「悪い失敗」。チャレンジして起きたのは「良い失敗」と言っています。
例えば体育祭は東京体育館や代々木体育館をお借りして開催しているのですが、その運営を子どもたちに任せています。初めて子どもたちに運営を任せた年、タイムスケジュールが難しくて、後半のプログラムが5つぐらいカットになってしまいました。そこには、高3にとっては最後となるプログラムとかも入っているわけです。会場は時間で借りているから出ないといけないし、リーダーとして運営していた高2は号泣しますし、もうめちゃくちゃでした。
でも、翌年はちゃんとできたんですよ。最後の挨拶の時に「今年は完璧だったね、大成功だね。これ誰のおかげかな」って言ったんですね。そしたら子どもたちが一斉に前年の運営をしていた先輩たちだって言って、大きな拍手が沸き起こったんです。こんな事があるから、子どもたちにはいつも「最初にやる人は大変なのだから、失敗というのは後輩への貢献だよ」と教えています。
木山:
すばらしい!感動です。
漆:
チャレンジしろと言っておいて、失敗を叱ったりしたら、誰もチャレンジしなくなると思うんです。子どもたちも起業体験をすると、「チャレンジして失敗した事が良かった。とても経験になったから」とか、言ってくれます。 でも、彼女たちにチャレンジを促すと、後始末しなきゃいけないこともいっぱい出てきますし、学校としてどこまでを許容するか悩む時もあります。
木山:
そんな時はどうするんですか?
漆:
そんな時は、私も「そもそも何を大事にしてのか」、という事に立ち戻ります。彼女たちはチャレンジしていたかどうか、という事を考えて、チャレンジしていたなら、しょうがないなって言う風に自分の中で整理するようにしています。
漆 紫穂子 | うるし しほこ
品川女子学院6代目校長。早稲田大学国語国文学専攻科修了。2006年より現職。教育再生実行会議委員(内閣官房)。同校は平成26年度よりスーパーグローバルハイスクール指定校。「28歳になったときに社会で活躍する女性の育成」を教育の柱に社会と子どもを繋ぐ学校作りを実践している。著書『伸びる子の育て方』(ダイヤモンド社)など。
対談はまだまだ続きます。次回をお楽しみに。
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(敬称略)